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2010年9月13日 (月)

小暮写眞館

Photo宮部みゆきの新刊「小暮写眞館」をようやく読むことができました。

書店で見かけた方はわかると思いますが、とにかく分厚い。。。
上下巻に分けてもいいくらいの厚み。716ページの本です。

購入も考えたのですが、本は増える一方で置き場にも困ってきたので図書館で予約。

1ヵ月待たされましたが、楽しみに待っていました。

でも図書館で借りると2週間で返却しなくてはいけないので、それまで読んでいた本を中断し、さっそく読書開始。

それでもやはり716ページ、時間がかかり明日が返却日。ギリギリ読み終えたところです。

3年ぶりの現代エンターテイメントということで、どんなお話なのかわくわく。
そしてその期待を裏切ることなく、本当に面白かったというのが素直な感想です。

この表紙を見てわかるように、内容もほのぼの系。
でも、ただの癒し系でないのが宮部みゆき作品。

お話はさびれた商店街の古い写真館の主人が亡くなり、売りに出でいた店舗兼住宅を主人公である花菱英一一家が越してくるところから始まります。

本当にどこにでもいる高校1年生の英一。そしてこんな中古物件を購入してしまう、少し風変わりな両親、小さい時からデキがよく可愛い小学生の弟。
この家族を中心に4部構成で話は進みます。

「この写真館に関係するへんな写真がある、何とかしてよ」と女子高校生から持ち込まれる心霊写真。
その写真の真相を探るうちに色々な人と出会い、色々な経験をしていく英一。
(心霊写真は出てきますが、ホラー小説ではありません)

決してワクワクドキドキしながら読み進む作品ではありませんが、とても読みやすく、先の展開や登場人物の関係や過去の話がとても気になり、気がついたら読み終えたという感じです。

で、今読み終えて、この作品を振り返ると、さすが宮部みゆき…と思うことがたくさん出てきました。

まずは細かい人間描写。
主人公の花菱家の人々はもちろん、英一の友人たちそしてその家族、この中古物件を紹介してくれた不動産屋の社長と、無愛想な事務員や会計係のおじさん、不思議な写真を巡って知り合う商店街の面々、さらにその先の人々。
亡くなった小暮写真館のご主人についても語られています。

とにかく多くの登場人物が出てくるのですが、一人一人をとても丁寧に書き込んであります。このあたりは「理由」に似ているかも知れません。

どの登場人物もとても個性的で魅力的。
特に英一の親友であるテンコ君は歯科医の息子なのですが、いつも突飛な格好をしている青年。その父親も庭で寝袋で寝るのが趣味という一風変わった親父さんで、直接の登場は少ないですがなかなかいい味を出しています。

ラストでそれぞれ大学に進学していく英一たちなのですが、テンコ君は医学部でなく法学部へ、その理由が「親父にお前は医者になる前に、世の中のきまりを学んだ方がいい」と言われたから…というのが、ちょっぴりユニークで面白い親父だと思ってしまいました。

他にも英一たちと同級生の「コゲパン」というあだ名の女の子。
色黒だということでついたあだ名で、いじめにあった過去を持つ子なのですが、家族でそれを乗り切り、今は家業の甘味屋の看板娘。
コゲパンちゃんに彼氏ができて、でも英一たちとのいい友情関係を保っていく様子は読んでいて癒されました。

「ピカ」と呼ばれている英一の弟の光くんはメチャ可愛い。
でも心の底にずっと抱えていた大きな問題があり、それを解きほぐしていくお話もよかった。

そしてもう一人、この物語に欠かせないのが無愛想な不動産屋の事務員の女性。
彼女と英一の関係、そして彼女の背負っている過去…最初から時々登場するのですが、後半は彼女はこの作品のキーパーソン的な存在になり、一気に読んでしまいました。

この作品のテーマを一言でいい表すなら「家族」かも知れません。

一見、明るく楽しい家族の花菱一家ですが、英一が10歳、ピカちゃんが2歳の時に4歳の妹風子ちゃんがインフルエンザからくる脳炎で亡くなっています。
花菱一家にふりかかった大きな悲しみと不幸は、実はずっと家族の中で引きずっていて、ある事がきっかけに色々な真実が見えてきます。

私が宮部作品の好きな理由のひとつに、日本語がとてもうまく使われていることがあります。
例えば英一が風子ちゃんが亡くなったときのことを思い出す場面で、「そのときの記憶を閉じ込めていた」と書くのではなく、「そのときのことは凍らせて片付けていた。それを今、少しずつ解凍させながら…」みたいな表現。

うーん、さすがです。そーいう言葉の使い方がとにかくいい。だから宮部作品はどんな長いお話でも読めてしまうのかもしれません。

この本を読み終えて、もうひとつ気づいた事が今現実にある様々なことがテーマとして取り上げられていたということ。

まず、舞台がどこの街にもあるさびれた商店街(シャッター通り)、そこに住むのは高齢者ばかりで、後継者問題や老人介護の話にも触れています。
1章では信仰宗教の団体も登場。
2章では外資系企業のヨコ文字だらけのプロジェクト、そしてそれに振り回され、不幸な結末を迎える小さな工場とその家族のお話。
3章は不登校の小学生が通うフリースクールの子どもたちと交流を持つてっちゃん(鉄道マニア)の心温まる話。
自主映画の製作集団もなかなかいい役割を果たしていました。
他にもネット上であっとあう間に広まる噂話の怖さや、マンション型集団墓地の様子など、色々な要素が含まれていたんだと改めて思い返しています。

このお話、ストーリーも登場人物もそのまま、テレビ小説にでもなればきっと面白いのに…と思いました。

毎日かばんに入れて持ち歩くには重くて大変でしたが、その分、十分楽しませてもらえた作品。オススメです。

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